なぜ私は「創森道」を始めたのか。
私は若い頃、カトリックの洗礼を受けました。
神父になることを真剣に考え、修道の道へ進むことも願っていました。
その頃、司教様から教わった言葉があります。
「結果を期待せずに愛しなさい。」
「人のために損をしなさい。」
若かった私は、その意味を十分に理解していませんでした。
しかし人生を振り返ると、その言葉はずっと私の心の奥で生き続けていたように思います。
やがて私は神父の道ではなく、会社をつくる道へ進みました。
そして不思議なことに、いつも「水」の仕事へ導かれていきました。
地下水。
湧水。
浄化。
循環。
気が付けば、私の人生は常に水と共にありました。
その歩みの中で、神社や宮司様とのご縁もいただきました。
丹生川上神社をはじめ、水神様を祀る神社へ足を運び、多くの祈りを捧げてきました。
苦しい時は神頼みばかりだったかもしれません。
それでも振り返れば、何度も助けられてきました。
お金が十分でなかった時もありました。
しかし不思議と必要なものは与えられ、人とのご縁にも恵まれました。
見えない何かに支えられて生きてきた。
私はそう感じています。




その後、水処理技術は大きな事業となり、
やがて地下水の熱を利用する自然エネルギー空調へ発展しました。
十年以上にわたり研究と実証を重ね、多くの方々の協力を得ながら、
その技術は社会からも評価をいただけるようになりました。
しかし私は経営者としては決して優秀ではありません。
会社を大きくすることよりも、新しいものを生み出すことの方が好きだったのです。
成功もありました。
失敗もありました。
会津に五十万坪の土地を得て、
エレメンタルライフコミュニティという理想郷をつくろうとしたこともあります。
泉があり、滝があり、魚が泳ぎ、人々が学び、働き、世界へ羽ばたく。
そんな場所を夢見ていました。
しかし、その夢は実現しませんでした。
七十代となった今、私はようやく気づいたのです。
神は大きな世界だけにおられるのではない。
小さな世界にもおられる。
五十万坪で叶えたかったことは、畳一枚の世界でも始められるのではないか。
そうして生まれたのが、この小さな森です。
地下には水があります。
植物があります。
百合が咲きます。
榊が育ちます。
娘が土を運び、妻が木を託してくれました。
毎日少しずつ変化し、少しずつ豊かになっていきます。
私はこの森を空調装置として作ったわけではありません。
森が元気になること。
植物が育つこと。
水が巡ること。
生命が豊かになること。
その結果として空調も助けられる。
人も癒される。
そう考えています。
機械は完成した瞬間から劣化が始まります。
しかし森は違います。
一年後の方が豊かです。
二年後の方が美しい。
十年後にはまったく別の森になっています。
私はこれを
「育つ空調」
「生きる空調」
と呼んでいます。




そしてもうひとつの願いがあります。
それは、この森を育てること自体が仕事となり、多くの人の暮らしを支えることです。
大きな工場も巨大な資本も必要ありません。
自然を愛し、植物を育て、水を大切にし、人に届ける。
そんな仕事が生活の糧になる世界です。
聖書には、
「野の百合を見なさい」
「空の鳥を見なさい」
という言葉があります。
自然は自らを誇らず、ただ与えられた命を生きています。
私はその姿に深い学びを感じています。
人もまた、
自然と共に働き、自然と共に暮らし、自然と共に豊かになることができる。
そう信じています。
創森道は、
森を育てる道であり、人を育てる道であり、暮らしを育てる道でもあります。
この小さな森から始まる世界が、
誰かの心を癒し、誰かの希望となり、
そして未来へ受け継がれていくことを願っています。
木村 英太郎
株式会社アクアグリーンエターナル 代表取締役
長年にわたり、水処理技術、地下水利用技術、自然エネルギー空調の研究開発に携わる。
地下水の持つ可能性に着目し、水質浄化から熱利用まで幅広い技術開発を行ってきた。
これまで畜産施設、工場、倉庫など様々な分野で省エネルギー技術の実証と導入に取り組み、自然の力を活かした持続可能な環境づくりを追求している。
現在は「創森道」を提唱し、森と人が共に育つ暮らしのあり方を探求している。
私たちの理念
自然は克服するものではなく、共に生きる存在です。
地下水も森も、私たち人間より遥か以前から存在し、静かに生命を支えてきました。
私たちは自然から学び、その力を活かしながら、人と環境の双方に優しい技術を生み出したいと考えています。
効率だけを追い求めるのではなく、
生命が豊かになること。
人が心地よく暮らせること。
未来へ受け継げること。
それを大切にしています。
現在取り組んでいること
現在は地下水利用技術、気液直接熱交換技術、輻射冷暖房技術を基盤として、
畜産施設、工場、倉庫などへの自然エネルギー空調の普及に取り組んでいます。
また、自宅に設けた小さな森を舞台に、
植物の蒸散作用
土壌の蓄熱
水の循環
自然の冷却機能
について日々観察と記録を続けています。
この取り組みは「森空調プロジェクト」として発展を続けています。
未来への想い
私はかつて大きな理想郷を夢見ていました。
しかし今は、その夢は小さな森の中から始まるのだと考えています。
畳一枚の森で起きることは、
世界中の森で起きていることでもあります。
人と自然が共に豊かになる仕組み。
自然エネルギーと暮らしの調和。
森と共に育つコミュニティ。
創森道は、そのための長い旅の名前です。
まだ完成していません。
これからも森と共に学びながら歩み続けたいと思います。